ラグビーワールドカップ実況者が教える10の練習法
ダレン・スタンフォード(ラグビーワールドカップ実況者、Broadcast Academy創設者)

2012年に始めたとき、私には経験がまったくありませんでした。ただ話すことが大好きで、ラグビーが大好きだっただけです。足りなかったのは練習する場所でした。だから私は本番の放送で学ぶしかなく、それは聞いていてもわかるほどでした。話すのが速すぎましたし、CMへの入り方、CM明けの戻り方、最終スコアでの締め方を教えてくれる人もいませんでした。
あなたは同じやり方で学ぶ必要はありません。実況者がすることのほとんどは、パソコンとマイクと試合の録画があれば自宅で練習できます。私が指導してきた中で最も早く上達する人は、才能がある人ではありません。毎週少しずつ練習し、正直に自分の声を聞き返す人です。
では、私はどうやって話す速さを直したのか。聞き返すことです。自分の声を聞いて初めて、今の自分の位置やどう聞こえているかがわかります。自分の映像や音声を批判的に振り返ることは本当に大切です。自分の声や言ったことに思わず顔をしかめることもあるでしょう。それも過程の一部です。試合を重ねるほど、話すスピード、伝える興奮、声のエネルギーに慣れていきます。
必要なもの
スタジオは要りません。必要なのは次のものです。
- パソコンかタブレット(試合を再生するため)。
- マイク。USBマイクが理想ですが、最初はスマートフォンのボイスメモで十分です。
- ヘッドホンやイヤホン。試合の音が録音に入らないようにします。
- 静かな部屋。ソファやカーテン、服の詰まったクローゼットなど柔らかいものがあると、声がクリアに録れます。
- ノートか1枚のスポッティングボード(準備用)。
- 立てるスペース。自宅でも、立って実況することはとても大切です。呼吸もエネルギーも、声の聞こえ方も変わります。
ステップ1:適切な試合を選ぶ
ハイライトではなく、フルマッチから始めましょう。ハイライトは大きな場面ばかりですが、実況の大半はその間の静かな時間です。そして初心者が苦労するのはまさにそこです。
- YouTubeや配信サービスでフルマッチを見られる試合を選びましょう。
- 元の実況に頼らないよう、音声はミュートにします。
- よく知っている試合、見たことのない試合、そして普段追っていないリーグや国の試合を織り交ぜましょう。最後のタイプは準備をせざるを得なくなります。
ステップ2:本番の放送のように準備する
実際の仕事と同じように練習しましょう。再生ボタンを押す前に:
- スポッティングボードを作る:両チームの選手、背番号、ポジション、それぞれについての一言メモを1枚にまとめます。
- 発音リストを書く。自信のない名前はすべて調べ、聞こえる通りに書いておきます。
- 試合中に伝えたいストーリーを3つ選ぶ。
- オープニングを書く:視聴者を迎え、試合の状況を伝える最初の20秒です。
- 言葉のリストを作る。私はよく、試合中に使えるさまざまな形容詞を書き出します。同じ言葉ばかり繰り返さないためです。使える言葉と情報をたくさん用意して、毎試合に臨みましょう。

自宅でできる10の実況練習
1. 10分実況
試合の最初の10分を実況して録音し、そこでやめます。短い練習なら集中力が保て、10分なら振り返りも簡単です。
2. スコアと時間のリセット
数分ごとに、今チャンネルを合わせた視聴者がいるつもりで、スコア、時間、状況を伝えましょう。最初はタイマーを使っても構いません。視聴者がスコアを気にする状態にしてはいけません。
3. 名前のドリル
適当な場面で一時停止し、見えている選手全員の名前を5秒以内に言いましょう。プレーが速く動くときに必要な、瞬時の判別力が身につきます。
4. 沈黙のドリル
試合で一番大きな場面(トライ、ゴール、決勝点)を見つけましょう。力強いひと言で伝えたら、5秒間黙って観客の歓声に語らせます。沈黙は、実況者が最も使いこなせていない道具のひとつです。
5. 入りと出
プレー以外の部分を練習しましょう。CMへの入り方、CM明けの戻り方、冒頭のあいさつ、最終スコアでの締め方です。これは誰も私に教えてくれなかったことで、自宅で簡単にリハーサルできます。
6. ペースチェック
2分間の実況を録音して聞き返しましょう。急ぎすぎていませんか?呼吸はできていますか?フェーズの合間はゆっくり、プレーが加速したら速く。ペースは試合に合わせるべきです。
7. 解説の一時停止
重要な場面のあとに一時停止し、なぜそれが起きたのかを20秒で説明しましょう。慌てた3つのポイントより、明確なひとつのポイントです。
8. 60秒のサイドラインリポート
サイドラインからの60秒リポート(負傷、交代、ハーフタイムのコーチのコメントなど)を書いて録音しましょう。そのあと、友人や家族を選手に見立ててインタビューしてみましょう。
9. 2人で実況する
友人とビデオ通話で、ひとりが実況、もうひとりが解説を担当して試合を伝えましょう。言葉の受け渡しと、相手にかぶせて話さないことを練習します。
10. 毎日声に出して読む
試合レポート、ニュース記事、本など、何でもよいので数分間声に出して読みましょう。呼吸のコントロールが身につき、話し方がなめらかになります。
ボーナス:競技のあらゆる形式で練習する
私は練習のとき、7人制と15人制の両方を実況していました。2つはまったく違う試合で、必要なスキルも違います。7人制はとても速く、トライが次々と生まれ、埋めるべき時間はほとんどありません。一方、15人制はフェーズが長く、セットプレーが多く、解説の余地も大きいのです。どんな競技でも、さまざまな形式で練習しましょう。より幅広く対応できる実況者になれます。

録音の振り返り方
録音するのは仕事の半分にすぎません。視聴者のように自分を聞ける翌日に聞き返し、次の点を確認しましょう。
- スコアと時間を十分な頻度で伝えたか?
- すべての名前を正しく言えたか?
- 「えー」「あの」などのつなぎ言葉はどれくらいあったか?
- 大きな場面に言葉をかぶせていなかったか?
- 目を閉じて聞いている人が、何が起きたかを思い描けるか?
- 声のエネルギーは場面に合っていたか?
次の練習で直すことをひとつだけ選びましょう。一度にすべてを直そうとしてもうまくいきません。
シンプルな1週間の練習プラン
| 曜日 | 練習内容 |
|---|---|
| 月曜日 | 試合のスポッティングボードと発音リストを準備する |
| 火曜日 | 前半を実況して録音する |
| 水曜日 | 聞き返して、直すことをひとつ選ぶ |
| 木曜日 | そのひとつに集中して後半を実況する |
| 金曜日 | ドリル:沈黙、入りと出、サイドラインリポート |
| 週末 | ライブの試合を見て、プロの実況をよく聞く |
週に2〜3時間の集中した練習で、1か月以内にはっきりとした上達が感じられます。

声を大切に
声はあなたの楽器です。毎回練習前にウォームアップをし、水を飲み、長い練習のあとは休ませ、叫ばないようにしましょう。声の通りは音量ではなく呼吸の支えから生まれます。だから私はいつも立って実況するのです。
練習をデモ映像にする
録音はすべてデモ映像の素材になります。誇れる実況ができたら保存しておきましょう。5〜6本たまったら、2〜3分のデモ映像にまとめ、希望する役割を伝えて送り始めましょう。こうして自宅での練習が最初の仕事につながります。
実際に効果があります。何人ものBroadcast Academy修了生が、この方法で大きく成長しました。まずBroadcast Foundations、次にBroadcast Intensiveを受講し、その後も自宅でひとりで練習を続け、今は私のMentorship Programに参加しています。そのひとり、ダニー・スティーブンス(Danny Stephens)は、2026年10月31日のRugby Europe International Championshipsのリトアニア対ドイツ戦で、初めての国際試合の実況を任されました。本当に特別なことです。

次のステップ
ひとりで練習するのは素晴らしいスタートです。体系的に、率直なフィードバックを受けながら練習すれば、さらに早く上達します。
次に読む:スポーツ実況者・解説者のなり方、ラグビー実況者のなり方
よくある質問
自宅でスポーツ実況を練習するには?
フルマッチの録画をミュートにしてマイクに向かって実況し、翌日に聞き返しましょう。事前にスポッティングボードと発音リストを準備し、毎回ひとつの改善点に集中します。
実況の練習にはどんな機材が必要ですか?
パソコン、マイク(最初はスマートフォンでも可)、ヘッドホンがあれば十分です。柔らかいものがある静かな部屋なら、よりクリアに録音できます。
どのくらいの頻度で練習すべきですか?
週に2〜3時間の集中した練習を、短い時間に分けて行えば、1か月以内にはっきりとした上達が感じられます。
ハイライトとフルマッチ、どちらで練習すべきですか?
フルマッチです。ハイライトは大きな場面ばかりですが、実況の大半はその間の静かな時間に行われます。